PMP試験の勉強で覚えた用語をかみ砕いて理解するための記事
1. ステークホルダー関与度マトリクスの概要と背景
ステークホルダー関与度マトリクスとは、プロジェクトのステークホルダーがどの程度プロジェクトに関与しているか、またどの程度関与してほしいかを可視化するツール。PMPにおいてはステークホルダー・エンゲージメントの計画や監視に役立ち、プロジェクトマネジメント知識エリアの「ステークホルダー・エンゲージメント・マネジメント」に関連する。具体的には、各ステークホルダーの期待される関与度と現状を比較することで、適切なコミュニケーション戦略を立案しやすくなる。
実務では、プロジェクトの開始段階でステークホルダーの影響力や関心度を把握し、その後の関与度を調整するために活用される。
2. ステークホルダー関与度マトリクスとは?
ステークホルダー関与度マトリクスは、ステークホルダーの現状の関与度と目標とする関与度を整理するための表。一般的に以下の5段階の関与度で評価される。
- 無関心 (Unaware) – プロジェクトに関心がない、または関与していない状態。
- 受動的 (Resistant) – プロジェクトへの関与に対して否定的、または抵抗している状態。
- 中立的 (Neutral) – 関与には前向きでも否定的でもない中立的な状態。
- 支援的 (Supportive) – プロジェクトを支援する意思があるが、積極的な関与ではない状態。
- 主導的 (Leading) – プロジェクトを積極的にリードし、他のステークホルダーに影響を与える状態。
このマトリクスを利用することで、どのステークホルダーがプロジェクトの成功に影響を与え、どのように関与度を変える必要があるかを明確にすることができる。特に、関与度を引き上げるためのアクションプランの立案に役立つ。また、PMBOKの「ステークホルダー・エンゲージメントの計画」プロセスにおいて頻繁に活用される。
3. 実務での適用例
例えば、新しいシステムを導入するプロジェクトにおいて、システムを使用する部門のリーダーが「受動的」な状態だった場合。プロジェクトチームはそのリーダーの関与度を「支援的」なレベルまで引き上げる必要がある。このために、リーダーに対する定期的なブリーフィングやデモンストレーションを行うなどのアクションを設定することで、プロジェクトの受け入れを促進し、円滑な導入を目指す。
※(筆者の体験ではなく、例です。)
4. アンチパターン – ステークホルダー関与度マトリクスを使わなかった場合の問題点
ステークホルダー関与度マトリクスを利用せずにプロジェクトを進めると、各ステークホルダーの期待する関与度や実際の影響力を把握できず、コミュニケーションの齟齬や反対意見の見落としが生じる可能性が高い。例えば、主要なステークホルダーがプロジェクトに対して「受動的」な立場であることに気づかず、後にプロジェクトの重要な局面で反対されてしまうリスクがある。
このような事態が発生すると、プロジェクトの進捗が大幅に遅れたり、計画を修正するために追加のコストや時間が必要になることがある。
※(筆者の体験ではなく、例です。)
5. 学びと今後の展望
ステークホルダー関与度マトリクスを活用することで、プロジェクトの進行中に各ステークホルダーの関与状況を常に把握し、必要に応じて関与度を調整することが可能になる。他のPMPプロセスやツール(例えば、リスク管理プロセスやコミュニケーション管理計画)と組み合わせることで、より一貫性のあるプロジェクト運営が期待できる。
次に学ぶと良いトピックとして、「ステークホルダー分析」や「コミュニケーション管理計画」が挙げられる。これらを理解することで、さらに効果的なステークホルダー・エンゲージメントが可能になる。
6. まとめ
ステークホルダー関与度マトリクスは、ステークホルダーの関与度を視覚的に整理し、適切なエンゲージメントを実現するための重要なツール。プロジェクトの成功には、関与度の調整が不可欠であり、そのためにこのマトリクスの活用が有効である。
7. PMP試験で出そうな問題例
- 次のステークホルダーの関与度を正しい順序に並べ替えよ。
- 無関心 (Unaware)
- 受動的 (Resistant)
- 中立的 (Neutral)
- 支援的 (Supportive)
- 主導的 (Leading)
- ステークホルダー関与度マトリクスは、どのプロセスグループで活用されるか。
このような問題では、各関与度の違いとその意義を理解し、適切に整理する能力が問われる。試験に向けては、ステークホルダーの関与度を具体的に把握し、それをどのように調整していくかを意識すると良い。