Self-Attentionとは
Transformerの中核をなす仕組みが Self-Attention(自己注意機構) です。これは、入力の中で「どこを見るべきか」を動的に学習し、重要な部分に重点を置く方法です。自然言語処理(NLP)で生まれた技術ですが、近年は画像解析や音声処理でも大きな成果をあげています。
たとえば、文章では単語同士の関係を捉えますが、画像や音声ではパッチや時間的フレーム間の関係を捉えられます。
人間の視線にたとえると
私たちが顔写真を見るとき、視線は自然に 目 → 口 → 輪郭 などに移動します。全てを同時に見ているわけではなく、「今の判断に必要な部分」に注意を向けています。
Self-Attentionも同じで、各パッチ(画像の一部や音声の一部)が他のパッチとの関係性を計算し、重要度に応じた重みをつけて情報を統合します。
簡単な実装例(PyTorch)
import torch
# 例: 8トークン(パッチや音声フレーム)、64次元特徴量
Q = K = V = torch.randn(1, 8, 64)
# 類似度計算(スケーリング付き内積)
attn = (Q @ K.transpose(-2, -1)) / 64**0.5
# ソフトマックスで重み化
attn = torch.softmax(attn, dim=-1)
# 加重平均で出力生成
out = attn @ V
この計算を層ごとに重ねていくことで、モデルは「どこを見るか」を徐々に学習します。
活用例
画像解析
- 部品の配置ミス検出:工場ラインの製品画像から、部品がずれている箇所を特定
- 異常検知:欠損や変形など、局所的な異常パターンを発見
音声解析
- 異常音検出:モーターや軸受けのきしみ音など、特定の時間にだけ現れる異常パターンを抽出
- 音声イベント検出:環境音から特定の音(例:ガラス破損音)を見つける
Self-Attentionが強い理由
- 長距離依存の学習:画像の離れた領域や音声の離れた時間区間でも関係性を捉えられる
- 動的な注目:固定的なフィルタではなく、入力ごとに重みが変わる
- 多様な特徴統合:複数の視点(Multi-Head Attention)で情報を多角的に分析
今後の展望
Self-Attentionは「入力のどこを見るか」を学習できるため、単なる分類だけでなく、異常検知や予測タスクなど幅広い分野での応用が進んでいます。特に画像や音声のように空間・時間的パターンを持つデータでは、まさに人間の視線のように重要部分を見極められる点が大きな強みです。
AI設計において、この“注目の仕組み”は今後ますます欠かせない要素となるでしょう。