MLOps環境で一番大事なのは「モデルAPIが止まらないこと」。予測APIが落ちると、ユーザー体験にも大きな影響が出てしまいます。そこで頼りになるのが Aurora PostgreSQL のマルチAZ配置 です。これはクラウド環境でシステムを安定稼働させるための「保険」のような仕組みで、実運用においては必須といっても過言ではありません。
マルチAZってなに?
マルチAZ(Availability Zone)配置は、1つのリージョン内にある複数のデータセンターにデータをリアルタイムで複製する仕組みです。
- 片方のデータセンターがダウンしても、自動で別のAZに切り替え
- 切り替えにかかる時間は 数十秒〜1分程度
- アプリ側から見ると「一瞬止まったけどすぐ復活した」くらいの感覚
つまり、ハードウェア故障や災害が発生しても、ユーザーが大きな影響を受けることなくサービスを継続できます。
これがMLOpsで効く理由
MLOps環境は、ただのWebサービス以上に 安定性が重要 です。
- 推論APIの安定稼働 → 推論リクエストが途切れず、SLA(サービス品質保証)を守れる。
- 学習ジョブの継続性 → 数時間〜数日の長時間処理中でも、中断リスクを減らせる。
- 障害対応の自動化 → 人手でフェイルオーバーを切り替える必要がなく、運用チームの負担を軽減。
MLOpsの現場では「APIが落ちる=ユーザーが離れる」につながるため、マルチAZは信頼性を高めるための大前提です。
運用時のポイント
マルチAZを使えば安心…というわけではなく、アプリケーション側の設計も大切です。
- Writerエンドポイント:書き込み用は常に1つ。Auroraが自動で正しいWriterにルーティングしてくれる。
- Readerエンドポイント:読み取り専用の接続先を用意。レポート処理や集計処理をReaderに逃すことで、Writerの負荷を軽減。
- アプリのリトライ処理:フェイルオーバー中に一時的に接続が切れることを想定し、リトライロジックを必ず実装する。
- 監視と通知:CloudWatchやGrafanaを使ってフェイルオーバーの発生を検知し、チームに即時通知できるようにする。
接続設定サンプル
DB_HOST_WRITER=mycluster.cluster-cfg.ap-northeast-1.rds.amazonaws.com
DB_HOST_READER=mycluster.cluster-ro-cfg.ap-northeast-1.rds.amazonaws.com
アプリケーションでは、読み取り専用のクエリはなるべく DB_HOST_READER
に投げるようにしておくと、効率よく負荷分散ができます。
よくある落とし穴
- リトライ処理を入れていない → フェイルオーバー中にアプリがそのままエラーを返してしまう。
- すべてWriterに集中 → 読み込みも書き込みも1つのエンドポイントに流すと、負荷集中で遅延が発生する。
- 監視不足 → Auroraが復旧しても、アプリ側で接続プールが切り替わらず障害が長引くケースがある。
まとめ
マルチAZは「万が一に備えた標準装備」。MLOps環境の信頼性を高めるには欠かせない仕組みです。WriterとReaderをうまく使い分け、リトライ処理や監視も組み込むことで、障害に強いアーキテクチャを実現できます。
✅ 今日の一言まとめ
マルチAZはクラウド時代の必須保険。MLOpsにおける「信頼性のベースライン」として、必ず取り入れておきましょう。